木の家は何年もつのか

木の家は何年もつのですか——見学会でよくいただく質問です。「木造は三十年で寿命」という話を聞いて、不安になる方も多い。私たちは富田林で六十年、木の家を建て、そして建てた家を手入れし続けてきました。その実感から、木造が本当は何年もつのか、何が寿命を分けるのかを、正直にお話しします。

手入れ
MYTH

「木造は三十年」は、寿命の話ではない

「木造は三十年」という言葉を、よく耳にします。これは建物の物理的な寿命ではなく、税制上の減価償却の年数や、かつての建て替えの平均が独り歩きしたものです。木そのものは、条件さえ整えば、はるかに長く保ちます。奈良の古い寺社が千年以上立っていることを引くまでもなく、手入れされた木の家は五十年、百年と住み継がれています。

大切なのは、木は放っておいて腐るものではなく、「濡れたまま乾かないと腐る」材料だ、ということです。裏を返せば、濡らさず、濡れても乾く家にしておけば、木は驚くほど長持ちします。寿命を決めるのは築年数そのものではなく、家がどれだけ水とうまく付き合えているか。私たちが解体現場で見てきた古い柱や梁が教えてくれるのは、いつもこのことです。

実際、木造住宅は適切に手入れをすれば数十年をこえて使えるもので、「三十年で寿命」という数字に物理的な根拠があるわけではありません。むしろ、早くに壊されてきた家の多くは、木が傷んだからではなく、家族の暮らし方が変わったり、手入れの機会を逃したまま時が過ぎたりして建て替えられてきたのです。木そのものの寿命と、家が使われなくなる年数は、分けて考える必要があります。

DIFFERENCE

水仕舞い・風通し・点検で決まる

では、もつ家ともたない家は、何が違うのか。三つあります。ひとつめは水仕舞い。屋根の勾配や軒の出、雨樋、外壁と窓まわりの取り合い——雨水を家の中や壁の中に入れない工夫です。軒の深い家が長持ちするのは、外壁と窓を雨から守れるから。昔の家に深い軒が多いのは、見た目のためではなく、木を守る知恵だったのです。

ふたつめは風通しです。床下と小屋裏、そして壁の中に空気が動く道をつくっておくと、木は多少濡れても乾きます。逆に湿気がこもる家は、見えないところで静かに木が傷む。みっつめは点検です。どんなにいい家でも、詰まった雨樋を放っておけば水は溢れ、やがて壁を伝って木を濡らします。小さな不具合を早く見つけて、早く直す。この三つが揃っている家は、世代を越えて住めます。逆にこの三つのどれかが欠けると、新しい家でも早くに傷みます。

この三つは、どれも派手な技術ではありません。軒を出す、床下に風を通す、樋を掃除する——聞けば当たり前のことばかりです。けれど、その当たり前を何十年も続けられるかどうかが、家の寿命を分けます。私たちが建てたあとも定期的にお伺いするのは、この当たり前を、施主さんと一緒に続けていくためです。家は建てて渡して終わりではなく、そこから先の付き合いのほうが、じつはずっと長いのです。

RECORD

四十年前の家を、解体して分かったこと

私たちには、四十年ほど前に建てさせていただいた家の建て替えを、先ごろ同じご家族から任された経験があります。解体して構造をあらわにしたとき、柱も梁も、驚くほどしっかりしていました。軒が深く雨がかりの少ない設計だったこと、そして代々こまめに手入れをされてきたことが、木を守っていたのです。土台まわりにも傷みがほとんどなく、大工たちも思わず唸りました。

反対に、増築を繰り返して雨仕舞いが複雑になった家や、床下の風が止まってしまった家では、思いのほか早く木が傷んでいることもあります。建てたあとに何度も伺い、屋根や樋、床下を見せていただいてきたからこそ分かる差です。建てて終わりにせず、同じ大工が長く見続ける——これが、地元の工務店が家を長持ちさせるいちばんの方法だと、私たちは考えています。私たちの歩みそのものが、その積み重ねです。

もうひとつ印象に残っているのは、その家の床下に潜ったときのことです。乾いた土と木の匂いがして、四十年経っても土台が痩せていませんでした。床下の換気がきちんと効いていた証拠です。ふだんは誰の目にも触れない場所こそが、家の寿命を静かに支えている。潜って、見て、手で触れて確かめる。解体や点検のたびに、私たちは古い家からそう教わってきました。

DESIGN

長持ちは、建てる前の設計で決まる

最後に、はじめから長持ちする家をつくるための、設計の勘どころです。まず、軒と庇をしっかり出すこと。見た目のためだけでなく、外壁と窓を雨から守る一番の装備です。次に、屋根と外壁の形を単純にすること。折れや谷が多いほど、雨漏りの弱点が増えます。凝った形より、素直な切妻や片流れのほうが、長い目では強い。

床下と小屋裏に空気の道をつくり、壁の中の湿気が抜ける構成にする。水回りは点検しやすい位置にまとめ、配管を将来替えられるようにしておく。そして、構造材には素性のいい木を選び、大工が一本ずつ木癖を見て、適した場所に使う。反りやねじれの出方まで読んで、暴れる力が家を締める方向になるように組むから、年月が経っても狂いにくい。

そして忘れてはならないのが、はじめから点検できる家にしておくことです。人が入れる床下の高さ、天井裏の点検口、将来配管を替えられる余裕——こうした「あとから手を入れられる設計」が、長く住み継ぐための備えになります。こうした地味な積み重ねが、五十年後にものを言う。木の家の寿命は、建てる前の設計と、建てたあとの手入れで決まります。どんな家が長持ちするのか、建築中の現場や施工事例で確かめてください。

CONTACT

長くもつ家は、建てる前から始まっています。

軒の出、屋根の形、床下の風。長持ちの工夫は、図面を引く前から決まります。建築中の現場や建てた家を見ながらご相談ください。ご相談は無料、しつこい営業はいたしません。

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